【本の感想】十二国記シリーズ

今更ながら、十二国記シリーズ(小野不由美)を読んでいる。
物語の感想を書くのも考察するのもあまり得意ではないんだけど、とりあえず覚書程度の感想。自分の感じたことをうまく言葉にできる人を尊敬するわ…。
まだ読み途中なので、読んだ順に追記予定です。
ネタばれあります。

エピソード0 魔性の子


エピソード1から刊行順に読むか、エピソード0から読むかとても迷ったのだけど。
ここから読んで良かったと思ってます。いや、エピソード1から読んでも絶対楽しいけど。

高里が何者なのかわからない、何が起きているのかわからない、でも、高里は気になる。放っておけない。
完全に、教育実習生の広瀬の視点で物語を読んだ。途中の広瀬の推察(高里が「王」なのでは?)にも、完全に同意していた。何が起きているのかわからないドキドキ感は、ここから読み始めなければ味わえなかったと思う。

最後、広瀬が一人置いて行かれるのが切ない。得られたと思った理解者は、実は自分とは全く異なる生き物だったのだ。高里は本来の居場所に帰り、広瀬はこの世界で居場所を探さなくてはならない。切ない。
高里の存在感が、放つ雰囲気がとても独特で、儚い様な力強いような、何とも言葉にならない。

ところで、教育実習生の事を「教生」って呼ぶのって普通??私も教育実習の経験があるけれど、全く聞いたことなかった。
私は中学に実習に行ったのだけど、高校だと生徒とかなり歳が近いから、こんな距離感なのかなーと、物語とは関係のない部分もちょっと楽しかったりした(笑)

エピソード1 月の影 影の海

 
始めて十二国に足を踏み入れる物語。出版順に読めばこれが最初の物語なので、完全に初めて、未知の世界と遭遇することになる。そうすると、より陽子に感情移入しやすいだろうな。そのパターンも体験してみたかった気がする。
私は「魔性の子」を先に読んだので、ケイキ=景麒は麒麟で、という事は陽子は王なのだろうと初めから分かってしまう。とはいえ、十二国の世界観はまだ全く掴めていないので、陽子と一緒に冒険している気持ちにはなれる。
ドキドキする、冒険ファンタジーだった。

陽子の心情の変化がとても面白い。極限の状態に置かれたとはいえ、高校生が、ここまで悟れるものだろうか。だからこそ、彼女は王なのだろうけど。
陽子の冒険がかなり厳しく辛いものなので、読者も陽子と同じ様に楽俊に救われる。楽俊、幸せになってほしい。

景麒は初めに陽子と契約を済ませてしまうので、陽子には「王として生きる」以外の選択肢が無いのが、正直、最後若干もやった。陽子が選べるような事を言われたって、すでに王になってしまっているんだから、国を捨てて蓬莱に戻れば国が荒れ、麒麟が病み、やがて陽子は死ぬわけでしょう。
とはいえ景麒が契約しようとしまいと、陽子が王なのは変えられないのだろうか?景気が陽子を探し当てなければ、もしくは陽子と契約しなければ、陽子以外が王になる未来もあったのだろうか?その辺はまだよくわからない。

景麒はわけのわからない事に突然巻き込まれる陽子に対して全く寄り添う様子が無く、全体的に説明不足で、突然契約まで済ませてしまうのが…もうちょっとうまいやり方は無かったのか???ただ、最後に景麒と陽子が再開するシーンで、なんとなく景麒も憎めないなと思ってしまう。不思議だな。
あと、巧麟が不憫だ…。延王から麒麟がどんな生き物かを説明された後、巧麟が陽子殺害を命じられるシーンを読み返してしまった。辛い。

漢字の使い方がとても面白くて、カタカナが漢字になるといちいち「なるほど!」と思う。この辺も、陽子と同じ視点になれた一因かも。物語に引き込むのが上手だな。

エピソード2 風の海 迷宮の岸


「麒麟」という生き物が、ただただ尊い。愛おしい。
泰麒はあまりに優しくて、健気で、儚げで…。誰もが愛さずにはいられない存在なんじゃないだろうか。
麒麟として本能的に知っているモノ、持っている能力を何も持たない自分に悩む様がとにかく切ない。まだこんなに幼いのに、一国を背負う役割はあまりに重いよ…。

景麒が、不器用ながら一生懸命泰麒を慰め力づけようとする様がとても良い。泰麒と景麒のやり取りが好きすぎて、そこだけ何回でも読みたい。
「月の影」同様、景麒に対しては「もう少しうまいやり方は無いのか?」と思わざるを得ないけれど。泰麒が「天啓が無いのに王を選んでしまった」と悩んでいるとき、はなから「麒麟が間違えることはないだろうから、泰麒の思い違いだろう」と思っていた。が、泰麒の告白を聞かされた景麒は、言葉にならない様子で一旦その場を離れてしまう。正直、ヒヤッとした。いや、著者が読者をドキドキさせようとしたんだと思うけど(笑)泰麒は素直だから、その場で景麒がちゃんと説明すればある程度納得したでしょ!実演するなら、言葉で説明して後日にやればよかったじゃん!10歳の子供が一国を陥れる様な罪を負ってしまったとしたら、あまりに惨い。
延王が泰麒を跪かせようとするシーンで景麒が「怒鳴った」と記述があって、何度も読んでしまった(笑)感情の起伏のなさそうな景麒が、泰麒への仕打ちに怒って怒鳴るのか…!同じ麒麟だから、どれだけ惨い仕打ちだったか分かったのだろうけど。それにしても。

延麒・六太に対しては、前作「月の影」にも今作にも出てきたわりに、今のところあんまり何の感情も無いんだな。物言いや佇まいが麒麟っぽくないのと、それほど見せ場らしい見せ場は無いからね。
次のお話が延王と延麒の物語の様なので、楽しみ。

「魔性の子」は広瀬に、「月の影」は陽子に、それぞれある程度感情移入しながら読んだのだけど、今作は作中の誰かの視点で読むことはなかった。ただただ、第三者として泰麒の行く末を見守ってた気がする。ミステリーでも冒険ものでもなかったし。
物語によって、結構印象が違うのも面白いな。

エピソード3 東の海神 ⻄の滄海


全編通して延王に「王とは何か」を説かれる。王とは何か、国を治めるとは何か。
尚隆が延王となって少し経った頃のお話。国が落ち着いたとも言い難い段階なんだけど、読んでいて延王は「きっと何とかしてくれる」という安心感がある。人の上に立つべく生まれ育った人なんだな。

最初から最後まで、あんまり延王を疑う気持ちにならなかった。何とかしてくれる、きっと上手く事を治めてくれる。
攫われた延麒と再会した時の「あまり心配かけるな」の一言が、凄く暖かくて人間らしくて、延王も結構いっぱいいっぱいなのかもしれないな、と。ただ、それをほとんど見せない。それが延王の美学なんだろうな。

勧善懲悪で水戸黄門的展開のストーリーは面白かったし、わりと軽く読める一冊だった。
尚隆と六太の軽快なやり取りも楽しいし、二人の信頼関係が築かれる過程を見るのも興味深かった。麒麟と王も、初めから完璧な信頼関係があるわけじゃないんだな、と。
ところで六太は生きている年数を考えると「子供」と呼べる歳ではないと思うのだけど、永遠に子供っぽいままなんだろうか…?いや、あのままであってほしいけど(笑)

エピソード4 風の万里 黎明の空

 
「月の影 影の海」で景王となった陽子が一回りも二回りも大きく成長していくのが、頼もしくてなんだかうれしくなった。
陽子含め3人の少女が、「どう生きていくか」を見つける話。ばらばらに始まった3つの物語が絡み合って、最後には一つになる。別々の場所から湧き出した水が、紆余曲折しつつ、近付いたり離れたりしつつ、一つの河に流れ込むようなイメージ。

初めは景王を憎んでいた祥瓊は楽俊との出会いで考えを改め、景王に会いたいと望んでいた鈴は清秀の死をきっかけに憎むようになる。清秀や蘭玉の死は、読んでいて辛かった…。祥瓊の境遇も、鈴の境遇も、「自業自得」とは言い切れなくて、それでも非がないわけでもなくて、生きるって辛いな…。
楽俊は相変わらず癒しだった。幸せに生活していて嬉しい。これからも、元気でいて欲しい。願わくば清秀や蘭玉にも、幸せな人生を歩んでほしかったよ。

陽子と景麒のやり取りが結構好きなんだけど、まだまだ信頼関係ができていないから見ていて時々もどかしい。お互いに相手を信じきれないというよりは、自分自身を信じきれていないんだよね、たぶん。
景麒は予王の在位が短かった事に負い目を感じて、自分の人選に自信がないし、女子高生だった陽子は右も左もわからない世界に放り込まれた上に王になって、自信を持てるはずもない。
それでも少しずつ、自分を信じて、相手を信じて、顔を上げて前へ踏み出すのが良い。色々辛い話だけど、最後は凄く前向きな気持ちになれる。
「月の影 影の海」でもちょっと思ったんだけど、終わり方がちょっとバーフバリと似てる。インパクトのある終わり方するよね。しばらく余韻に浸ってしまって、物語から抜け出せなくなる。

最後に、初勅として伏礼を廃止するシーンで陽子が語る言葉が、物凄く良かった。
「他者に頭を下げさせて、それで己の地位を確認しなければ安心できない者のことなど、私は知らない」
「そんな者の矜持など知ったことではない。―そんなことよりも、人に頭を下げるたび、壊れていくもののほうが問題だと、私は思う」
「真実、相手に感謝し、心から尊敬の念を感じたときには、自然に頭が下がるものだ。礼とは心の中にあるものを表すためのもので、形によって心を量るためのものではないだろう。礼の名のもとに他者に礼拝を押しつけることは、他者の頭の上に足を載せて、地になすりつける行為のように感じる」
「地位でもって礼を強要し、他社を踏み躙ることに慣れた者の末路は昇鉱の例を見るまでもなく明らかだろう。そしてまた、踏み躙られることを受け入れた人々が辿る道も明らかなように思われる。」
新潮文庫 風の万里 黎明の空 p388-389より抜粋

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